大判例

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大阪地方裁判所 昭和28年(ワ)5159号 判決

阿波商業銀行

原告は、取立委任を受けた被告銀行が訴外山本産業との当座取引契約により本件手形を満期に右山本産業の当座勘定から任意に決済し取立を為し得たのに之を怠り、他の手形のみ優先決済したことは受託任務懈怠であると主張するので案ずるに、証拠によると、訴外山本産業は被告銀行を支払場所として振出した約束手形及びその引受を為した為替手形については被告銀行に支払を委託したものとみなし、被告銀行においては満期又はその後に呈示を受けたときは当座勘定中よりこれが支払をなす旨の条項ある当座勘定約定書を当座取引開始に当り被告銀行に差入れたことを認め得るけれども、証拠によれば、右約定書の右条項に関する限り当事者は該文言通り之による意思なく、すべて被告銀行を支払場所となる上記の如き山本産業の支払手形は、手形交換所を経由したものを除きすべて山本産業の選択指示に従い、而も支払当日山本社長直接被告銀行に現金持参来行して決済していたもので、被告銀行には交換所経由手形以外については右訴外会社の当座勘定中より任意に手形決済をなす権限を有していなかつたことが認められる。

原告は被告銀行にかかる権限がなかつたことは当座勘定取引に関する根本原則を無視したものであると主張するが、しかし当座勘定取引においては取引者が取引銀行を支払人として振出した小切手につき取引銀行は必ず取引者の当座預金をもつてこれが決済支払をなすことをもつて根本原則とするものであり、従つて証拠によるも、之に準じ取引銀行を支払場所又は支払担当者とする取引者の支払手形につき取引銀行が取引者の当座預金をもつてこれが決済支払をなす例の多いことが認められるけれども、そうしないからといつて右取引の根本原則を無視したものということはできない。このことは証拠により認められる如く、実際界において一般に稀ではあるがかかる事例の存在することよりも之を窮うことができるし、又かかる事例は取引の安全を害し或は公序良俗に反するものとも考えられない。而して本件手形がいづれも手形交換所において決済を求められたものでないことは証拠により明らかであるから、被告銀行が本件手形につき訴外会社の当座勘定中から任意決済をなし得る権限あることを前提とする受託任務懈怠の原告の主張は採用し難い。

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